商店街の外れにある私のバイト先はクリーニング店で、シーズンオフの平日はお客さんも少なく、受付カウンターにただ座っているだけ。とても暇です。最初はそれが苦痛でしたが、お店の向かいにあるガラス屋の従業員さんに恋をしてからは、それが幸せなひと時に変わりました。きらりとうちの店内にガラスの反射光が走ったら、彼がお店の前に出てきた合図。ガラス屋の息子さんなのか、ただのアルバイト学生なのかわかりませんが、黒く日焼けした引き締まった身体。たまに誰かに見せる笑顔に私はいちころです。
ガラス屋は商店組合に加盟していないらしく、詳しいことは全くわかりません。うちのお店ともなにも関係がないので、彼と話すきっかけさえつかめないでいるのですが、もしもの時のために、私は彼と話が合うように、窓ガラスについて独自に勉強しています。それまでは窓ガラスなんて全く意識したことはなく、自宅の窓ガラス掃除さえしたことのなかった私ですが、昨夜は彼のために、いろんな窓ガラスのメリットをネットで調べちゃいました。
ガラスって今は、色々な種類があることをご存知でしょうか。私はそれまで、ガラスの厚みの差や、色の差くらいしか気が付いたことはありませんでした。でも今は、薄くてもとても丈夫だったり、透明なのに日焼けの原因である紫外線を防いだり、外部からの騒音を防いでくれる遮音ガラスなどもあるそうです。たかがガラスと思っていましたが、そのガラス1つで、室内の暖房効率冷房効率まで左右するというのですから、ガラスだけを扱うお向かいのガラス店のような専門店があることにも納得です。
うちのお店ほどではありませんが、お客さんやお店の人が定期的に出入りしているお向かいのお店は、きっととても繁盛しているのだろうと推測できます。なんとか彼と接する機会を得るために、自宅やこのアルバイト先で、窓ガラスの交換の必要性でも生まれないかと、実は密かに企んでいます。